2010年7月30日金曜日

がん患者とアロマについて

アメリカのMDアンダーソン病院の敷地内には、患者および介護者が癌と共に暮らしていく医学以外の問題に役立つことを目的とした「癌治療総合センター」という施設があります。
そこでは、アロマセラピーの講座なども開かれ、アロマセラピーの基本知識や安全性に関する注意点を学んだりできるそうです。
アロマセラピーは、リンパ液の排出を促したり、不安や吐き気を抑えたり、眠気を誘ったり、一時的なリラクゼーションにプラスに働くそうです。
(以上、海外癌医療情報リファレンス/癌翻訳リファレンス/最新研究/代替医療2006-08-03)

がんとアロマセラピーについては、日本でも研究され、補完代替医療ガイドブックの中に掲載されています。
厚労省がん研究助成金によるがんの補完代替医療に関する研究で、今年の四月「がんの補完代替医療ガイドブック」第2版が発行されました

そこには
がんが縮小したり消失したりすることはない

不安感やうつ症状などの精神的症状の改善効果
痛みなどの身体的症状の改善効果
抗がん剤や放射線治療の副作用の軽減効果
などのQOLの改善効果が認められるのではないかと書かれています。

でも、「効果がない」という臨床研究もあり、
今後も更なる研究が必要だとしています。

何よりも問題なのは、アロマ(精油)によっては、悪影響を及ぼすものがあるため、主治医や専門知識や技術のある人に相談しながら使うことが大切だということです。

実は、私はちょっと寝付きが悪い時など、カモミール茶を飲むとぐっすり眠れます。
でも、ホルモン療法中の乳がん患者はカモミールを使ってはいけないと聞きました。
なぜなら、私の飲んでいるタモキシフェンというホルモン剤は、エストロゲン受容体をブロックすることで女性ホルモン(エストロゲン)の働きを抑制しています。
が、カモミールは、このような薬の効き目を弱める恐れがあるそうです。
なので、今はカモミール茶は飲んでいません。

このような注意は必要ですが、アロマを上手に使って生活に潤いをもたらしたいものですね。

NPOピュア・船橋がんサロン「ここにおいでよ」では、リレーフォーライフinちば2010に参加し、アロマハンドマッサージの模擬店を開きます。
ぜひ、お越し下さい。

リレーフォーライフinちば2010は、9月18日(土)12:00~19日(日)12:00、八千代市総合運動公園内多目的広場で開催されます。

2010年7月21日水曜日

閉経前・閉経後という区分

「がんナビ」というサイトに“ASCOが6年ぶりに乳がんホルモン療法のガイドラインを改訂”というニュースが載っていた。

その内容は
・閉経後の女性患者では、タモキシフェン投与後、AI(アロマターゼ阻害薬)の投与を考慮すべき。
・タモキシフェンは閉経前・閉経後のすべての女性患者に投与すべき。
 閉経前および閉経期の女性には、診断時から5年間タモキシフェンを投与することを推奨。

といった事。
私が注目したいのは「閉経期」という言葉。
キャンサーネットジャパンの乳がん体験者コーディネーター講座を受講していた時、「乳がん発症のピークと言われる年齢は、閉経前でもなく閉経後でもない状態の方が多いはず。なのに、閉経前と後という2つの分け方しかないのは、なんか、納得できないな」と思っていました。

実は私も、そのどっちつかず状態の時に乳がんと告知されました。
ホルモン感受性ありのためホルモン療法適用。
でも、ガイドラインなどを見ても閉経前と閉経後の説明しかありません。
細かいことはいちいち気にしない性格なのですが、これだけは、何かひっかかっていました。

今後、ガイドラインなどでは是非
閉経前・閉経期・閉経後と3区分の表記でお願いしたいと思います。

……こんなことにこだわるの、私だけかな……

2010年7月20日火曜日

患者サロンについて―第15回日本緩和医療学会学術大会より

6月19日のシンポジウム「実証研究から見るスピリチュアルケアの方向性」の中で、

患者がどのような「スピリチュアルケア」を望んでいるかというインタビュー調査の発表があった。

その中で、すべての精神的苦痛に対して、有効だったことはという問いに対し次のような答えがあったという。

・ 病気以外の話も聞いてくれる。

・ 気持ちをわかってくれる。

・ 一緒に考えてくれる。

・ 患者の意思を第一に考えてくれる。

・ 普通に接してくれる。

これって、私たち「患者サロン」でしていることじゃないの?と思っていたところ、京都大学大学院 人間・環境学研究科の佐藤泰子氏から、「患者サロン」についての研究発表がありました。

『患者の語りを患者が聴くことの意味』

京都大学大学院 人間・環境学研究科 佐藤 泰子


「患者に患者のケアができるのか」という問いに対する答えとしては

患者は患者の体験や苦しみを知っている。そこに、援助の可能性があるかもしれない。回復させる瞬間があるかもしれない。

これだけは言える。

「そうだよね・つらいよね」という言葉の重みが違う。

この「わかってもらえた感」の違いは、セルフケアのスタートとなるのではないか。

患者は、退院すると健康な人たちの中で病を語れないという孤独感にさいなまれる。
この患者の不平・不満を誰かが受け入れることは必要であり、医療者との関係性や治療への意欲という点においても有効ではないだろうか。


「患者が自分の病を語ることの意味」について

人は苦しい事があったとき、そしてその苦しい事をどうすることもできない(苦しい事が不可避である)時、自分の思いを動かして対処しようとする。

病を語る事で、自分にとっての病の意味や認識を変更させて、新しい意味を探し出すのではないだろうか。

患者は、語ることによってバラバラに浮かんでくる思いを再構築し、閉塞された圧倒的な苦しさから少し解放され、次のステップへ進むことができる。


サロンに集う患者は、聴くということで、同じ病の患者をを支える。


患者が語り、患者が聴くことの意味は、まず「どうせ話してもわかってもらえない」という蓋を外せるということではないか。

「わかってもらえない」という蓋を取り外すことができ、「わかってもらえた気がする」ことが、患者サロンでの患者の語りの意味ではないだろうか。


しかし、同じ患者同士といっても、自己と他者の間には溝がある。

この溝があるからこそ、一生懸命語ることができ、苦しさからの解放が始まり、新しい意味と出会うことができる。


聴く役割をになう患者も、語る患者との関係性で自分の役割に気づき、自己肯定や生きる意味を見出すことができるのではないか。

患者サロンには、談話型・レクチャー型・混合型などいろいろあるが、今後は、サロンの問題点を洗い出し、運営の方法論を確立していく必要があるのではないか。

患者サロンは、パラレルなケアの場であるべきであり、ファシリテーターや世話人の質も問われることになるだろう。

そして、参加者の「聴いてあげる力」も大切。参加者が、「聴く」という役割をになっていることを自覚することも必要ではないだろうか。



佐藤先生のお話は、患者として、そして患者サロンを運営するものとして「納得」の連続であると同時に、このような患者サロンでありたいと思えることばかりでした。
特に「患者が語ることの意味」そして「その話に患者が耳を傾けることの意味」には、サロン運営の柱ともなる考え方だと思いました。

がんサロンを立ち上げて3か月。

まだまだ「がんサロン」というものが、一般に認識されていない。

一般もそうだが、医療者にも患者自身にも、がんサロンは認識されていない。

がんサロン運営は、課題が山積みだが、私たち世話人もしっかりと勉強をして、患者にも、医療者にも、そして地域にもその必要性がわかってもらえるようにしていきたいと思う。

2010年7月18日日曜日

がんと免疫

がんになると気になる言葉に「免疫力」というのがあるのではないだろうか。
私も「免疫力アップでがんに勝つ」などと言った本のタイトルに心惹かれてしまう時期があった。そして今も「免疫力」という言葉は、妙に気になる言葉だ。
今、NKT細胞を標的にして治療する免疫細胞療法や、ペプチドワクチン療法「免疫療法」が研究されているという。
が、いろいろな代替療法の中で、この「免疫」という言葉が独り歩きしている感も否めないのではないだろうか。

免疫って一体なんだろう?
そんな疑問を持っている方へ、NPOがん患者支援機構による講演会のお知らせです。

8月7日 「こころと免疫」14:00~18:00 東京大学附属病院

現代葬儀事情

7月12日、長い間闘病生活をしていた母が亡くなった。
本当に闘病生活が長かったので
心から「ご苦労様」と言ってあげたい。

ところで……
3年前父の葬式をした。
その時と、今回と
葬儀の様子が様変わりしていた。

父の時も、今回も
「家族のみの密葬」
という形式で行った。
通夜も告別式も
自宅で、本当に家族のみで行った。
ご近所の方へは
葬儀のご挨拶に行き
自治体にも連絡しない
(訃報の回覧は回さない)旨を伝えた。

葬儀会社との話し合いで
母らしい葬儀を演出してもらった。
華やかな事が好きだった母のために
祭壇を飾る花も、形式にこだわらず
淡いピンクを基調にした
とてもきれいなものにしてもらった。

ところで、3年前と何が様変わりしたかというと
遺影に、リボン飾りがついた事だ。
ちょこんと飾られたリボンは
とてもかわいかった。
で、火葬場にいくと
どの遺影にも、同じようなリボン飾りが着いていた。

このリボン飾りも
故人を偲ぶ気持ちに寄り添う
よいアイデアだとは思った。
が……
それぞれの葬儀社で工夫されたリボン飾りが
今後、どんどん派手になっていったら……
などと想像してしまった。

父の葬儀を出す前は
「葬儀には金をかけない主義」を豪語していた私だが
父と母の葬儀を出して思うことは
葬儀は、残されたもののためにあるということ。
予算の大小や、形式にとらわれず
残されたものの気持ちに寄り添った葬儀であることが大切だと思う。

父の葬儀では、阪神ファンだった父のため「六甲おろし」で見送り
今回は、フラワーシャワーで見送った。
この、ちょっと常識はずれに見える葬儀は
私にとっては、大切な思い出であり
グリーフケアにもなっているような気がする。

……この意見に姉も概ね賛成なのだが
いつも言うことは
「自分の住んでいる所では、土地柄、こんな葬式は無理かもね……」
まだまだ、古い風習にしばられている所も多いのだろう。

2010年7月7日水曜日

終末期医療を考える

私は、今年の5月末までパルシステム・セカンドリーグ公式ブログで「誰でも通る、延命治療、終末期医療」という記事を書いていた。
それがご縁で、小金井東公民館より市民講座「こころをつなぐ看取り」の講師を頼まれた。
厚労省の「終末期医療のプロセスに関するガイドライン」や日本病院協会の「終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~」を引用し、「自分の受けたい終末期医療のためには、意思表示をしておくことが大切」というところに重点をおいてお話をした。
そして、自分の意思に基づいた終末期医療(終末期緩和医療を含む)を受けて自分らしく人生を全うする姿は、残された人への命のメッセージとなるのではないかという言葉で締めくくった。

私の話の後、ご家族の看取りを経験された方から、いろいろなお話をきくことができた。
そして、そのお話を聞いた参加者から「貴重なお話だった」という感想を聞くことができた。

日常生活から死が遠ざけられた社会で生きてきた私たちは、人の終末期についての知識があまりにも少なすぎる。
だから、終末期医療について考えなければ……とは思っても、なかなか考えることができないのではないだろうか。

いろいろな方の看取りの事例を集めたホームページを作ってみたいな……
この講座を終えて、そう思っている。