2010年11月28日日曜日

第4回アジア乳がん患者大会―第2部 シンポジウム

第2部のシンポジウムは
医療政策へ患者参画がテーマでした。

最初に
国の予算配分に患者の要望がどのくらい反映されているのだろうか
という質問がされると

台湾では、患者のかわりに患者会が医療費への提言を行っている、とのことでした。
では、日本はどうだろうかというと

患者の7%が、経済的負担から
治療の中止や変更をしていることが
アンケートによりわかった。
このような現状を見ると
医療についての財源や、負担と配分を考える時が来ているのではないか。
そして、日本でも患者による患者目線の提言があってもいいのではないか。
という話がありました。

治療費の負担に関しては
韓国では、乳がんは「深刻な病気」と分類されていて
5年間は10%の自己負担で治療が受けられるとか。

うらやましいですね。

小嶋さんからは
「がんの撲滅」を掲げたイベント
アメリカのStand Up to Cancerのようなイベントができないだろうかと考えている
とのお話がありました。
この一大チャリティイベントで集まった寄付金を、がん研究へ役立てたい。

この話は、キャンサーネットジャパンの
「もっと知ってほしい乳がんのこと2010」でも
少し、お話がありました。
その時も思ったのですが
本来なら、リレー・フォー・ライフで集まった寄付金が
がん研究に捧げられてもいいはずなのに
(私は、そうすべきと思っています)
そうはなっていないのが、日本の現状のようですね。

もう一つ、耳寄りなお話です。
それは、順天堂医院乳腺科医師の斎藤さんのお話です。

斎藤さんたちは、今
台湾の患者会から紹介されたような
患者目線のガイドブックを
作成しているというのです。

斎藤さんは
ピアサポートについて
体験者から話を聞くことで
患者さんに、治療への納得感が高まるのではないか
と思っていらっしゃるとか。

どのようなガイドブックが出来上がるのでしょうか。
楽しみですね。

がんと共に生きる会の海辺さんは
患者会のネットワークが広がらないことの理由の一つに
個人の熱いボランティア意識のみに支えられている現状があるのではないか
患者会が、社会中の一つの枠と認められるようになることが
安定的な活動のためにも、必要だとの発言がありました。

患者アドボカシーということをテーマに
話し合われたシンポジウムの最後に
埴岡さんが
活動が目的ではなく、誰に安心を届けるかを考えて活動してほしい
と発言されましたのも
私の心にズシンと響きました。

この時、脳裏に浮かんだのが
12月3日の乳がん体験者によるゴスペル隊の練習の一こまです。
先日、レッスン中に
亀渕友香さん

「あなたたちは、何故、この場に立って歌うのか
それを考えてほしい。
 誰のために、歌うのか
 歌うことで、何を訴えたいのか」

この日、亀渕さんは
乳がん体験者へのレッスンという事で
アメリカ生活でのピンクリボン運動を思い出され
ピンクリボンのイヤリングをしていらっしゃいました。
当時のアメリカは「乳がん撲滅」を掲げたピンクリボン運動をしていたとか
もう、十数年以上前の話だそうです。

この日のシンポジウムで海辺さんも
乳がん患者から
「ママ友に乳がんのことを知られたくない」
という声をよく聞く。
まずは、このような現状を脱却することが
ピンクリボン運動のひとつの目的なのかもしれない」
というような事をおっしゃっていました。

こうして、アメリカやアジアの国を見渡してみると
どの国よりも、一歩も二歩も出遅れている
日本のがん医療の現状が見えてきました。

2010年11月27日土曜日

第4回アジア乳がん患者大会―第1部「各国の患者会活動報告」

第4回アジア乳がん患者大会が
クリスマス仕様のホテル日航東京にて開催されました。


主催の乳がん患者会・ブーゲンビリア代表内田絵子さんは
16年前にシンガポールで乳がんと診断され、治療を受けました。
その時、元イギリス領のシンガポールの医療が
人間の尊厳を大事にする医療である事を痛感されたそうです。

基調講演で内田さんは
患者が声をあげ、がん対策基本法が制定されたとはいうものの
がん医療に関する相談支援や情報提供の現状はどうだろうか

23年度概算予算で、がん予算が826億円
うち、がん医療に関する相談支援・情報提供への予算は、1億円
このような予算配分では、患者の声が
医療政策に反映されているとは、とても言えないのではないか

と、医療政策に患者の声が十分に反映されていない
日本の現状をお話されました。

次に、アジア各国からの報告がありました。

韓国のキム・スーさんは
韓国での問題点として
患者団体の多くが都市部にあり、地域格差があること
をあげられました。
そして、韓国では
50歳未満のサバイバーから
リーダーを育てる活動をしていることや
政策への働きかけは
日本同様、今後の課題であるとおっしゃいました。
報告の最後には
「アジア全体で一つの力に!」と
呼びかけられました。

シンガポールのがん専門看護婦のジョセフィン・アンソニーさんは
乳がん専門のクリニックがオープンし
ワンストップサービスが実現していることを紹介して下さいました。

この発表の後
司会のTBS解説委員 小嶋修一さん(精巣腫瘍患者会「J-TAG」立ち上げ)から
・ シンガポールはワンストップサービスなど、すばらしい医療水準。
・ 日本の医療は、アジアトップではない。
とのコメントがありました。

台湾のグロリア・ウェイチェン リイさんは
「台湾の乳がん患者は、一つの大きな家族」という考え方をしている。
それは、再発リスクをかかえる乳がん患者は
お互い協力しあって一つになることが大切だからだと
おっしゃいます。

台湾にはReach to Recovery Iinternational(RRI)
という乳がん患者会のネットワークがあることも紹介されました。
このネットワークでは、愛と共有を合い言葉に
アドボカシー活動や、ピアサポート活動をされているとか。

ここで、注目したいのが
患者へ病気の情報を届けるために
患者視点のガイドブックを作成しているという事です。
患者視点のガイドブックといっても
正しい情報であることが、何よりも大切。
ですから、このガイドブックは
医療者により、監修されています。
そして、病院内で、このガイドブックをもとに
ピアサポートが行われているとか。

すばらしいですね。

この時、紹介されたいくつかの写真の中で
特に印象的だったものがあります。
それは、あるワークショップの写真。
そのワークショップは
御夫婦で参加するもののようで
ご主人が一輪の花を奥様へ捧げている様子が
撮られていました。

乳がんは、女性特有の臓器の病
夫といえども、理解しがたい部分があり
患者を支えることは、大変なのかもしれません。
そう言えば
乳がん患者の夫はうつのリスクが高い(がんナビ、2010.10.12)
というニュースがありましたよね。

さて、
2011年11月9~12日タイペイで
Reach to Recovery International主催の
第16回 国際乳がんサポート大会が開催されます。



この会議は
アジアおよび太平洋地域、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ諸国から
乳がん患者と支援団体と医療従事者が集まる
国際フォーラムです。
アジアで会議が開かれるのは32年ぶりだとか。
RRIという全国的な組織があるからこそ
開催することができるのでしょうね。

多くの患者団体がありながら
このようなネットワークができない日本を顧みて
羨ましいやら、ちょっぴり、くやしいやら……

司会のTBS小嶋さんも
「日本に乳がん患者会は多くあるけれど、連合できていない」と
コメント。

続いて報告に立たれた
Hope Project 桜井なおみさんも
開口一番
「日本には、乳がん患者会の連合体がない」ことに言及。

ピンクリボン運動も、開始から10年経つが
何が変わったのだろうか。
死亡者数が減らないのは、どうしてなのだろうか。
今、新たなピンクリボン運動を考える時ではないかと
問題提起。
今までは
一般の人への啓発活動が主だったけれども
今後は
患者やその家族のため
また、乳がんで亡くなった方やそのご家族のため
という視点でのピンクリボン運動も
必要なのではないか
と力説されました。

桜井さんの発表の中
一番印象的だったのは

東京タワーをピンクに染めるだけが、ピンクリボン運動ではない!

という言葉です。

これには、同感の一言!

最後は、日本医療政策機構の埴岡さん。
みんなで力を合わせ、国を乗りこえ
いかにして、政策提言をしていくのかを考える時がきている
とのお話の後
日本医療政策機構によるアンケートから

患者や国民が、医療政策を不満に思っているのは
国民から制度がどのように作られているのかがみえないからだ。
医療制度は、誰が決めるのか
と日本の医療政策の現状をお話下さいました。

2010年11月20日土曜日

日経新聞、2010.11.19日配信
がん対策協議、迷走のニュース


患者委員から
がん対策基本法に患者の声を反映させる
という謳い文句に反し
患者の声が十分に反映されていない
と指摘し
会長解任の緊急動議を提出したというニュースです。

なんでも
5ヶ月間も協議会が開催されず
その間に厚労省が
概算要求でがん対策予算を提出。
その概算要求には、協議会からの意見が
十分に反映されていなかったと
患者委員が指摘。
それに対し、厚労省側は
「法律上は協議会には
(5年に1度検討する)がん対策推進基本計画の
意見を聞く以外に業務はない」
と権限を限定的に説明
と記事には書いてあります。

厚労省のこの説明には
患者の一人として
残念でなりません。

患者と国が一緒になって
がんを撲滅しよう
というのが
がん対策基本法の思想と思っていたのに
これでは、国の認識は
患者の意見はお飾り程度
という事なのかと思ってしまいます。

MDアンダーソン病院の上野直人医師は
患者は、医療者や社会へ向けて
意見を発信すべき
と、よくおっしゃいます。
患者の意見が
医療を変え
医療を発展させ
社会を変えていくのだと。
→2010年第48回癌治療学会・市民公開講座で
上野先生がお話されています。
NPO法人キャンサーネットジャパンの
ビデオライブラリ
でご覧頂けます。

でも、日本では
現状、患者の声は
負け犬の遠吠え状態なのか
と、思ってしまいました。

……でも、ここで諦めてはいけないのです!
患者、一人ひとりが
地道に、少しずつ
思いを隣人へ、そして、社会へ伝えていくことは
次代への、大きなキャンサー・ギフトとなるはず……と思うのです。

2010年11月16日火曜日

もっと知ってほしい乳がんのこと―NPO法人キャンサーネットジャパン

11月14日、東京ウィメンズプラザで「もっと知ってほしい乳がんのこと」が開催されました。

その中から、ちょっとご紹介です。

ハーセプチンという分子標的薬は
HER2陽性の乳がんにとても効果があります。
この薬が開発されるまでは
HER2陽性の乳がん患者の生存期間は思わしくありませんでした。で
も、この薬が出来てからは
なんと他のタイプの乳がん患者よりも生命予後が良い
というデータもあるそうです。
でも、HER2陽性患者さんのすべてに
このような効果があるわけではないことも事実です。
そこで、T-DM1という新たな抗がん剤に期待が集まっているようです。

このように次から次へ新たな薬が開発されていますが
例えば、稀少なタイプ、例えば全患者の3%しかいないタイプのための
新薬を開発するのだろうかという不安があるようです。

次は、温存術についてのお話。
温存術も数よりも質の時代に入ったようです。
質とは、すなわち整容性の問題です。

整容性を考えて
温存よりも再建を選ぶ患者さんもいらっしゃるようですが
聖路加国際病院乳腺外科の山内英子先生の次の言葉が
とても印象に残りました。

「術後、フラットになった胸を患者が目にした時の精神的負担が大きい」

温存術も発達し、美しい温存も可能になってきているとか。
そして、山内先生は、次のようにおっしゃいました。

温存・切除・再建
様々な選択肢があるが、自分の選択をすることが大切
何が一番よいのかは、その人でないと決められない。
多くの選択肢からどれを選択するかを、患者と医師が一緒に悩み、決めていくことが大切。
そして、自分の決めた治療法に、自信を持ち、誇りを持ってほしい。

わぉ!
医療者は、病の事しかわからない。
患者が、自分の事を語ることから、NBMが始まる。
診察室で、悩みながらも
自分の今までの人生、これからの人生を医療者に語り
共に悩むことで、その後の物語を作っていく。

これぞNBM(Narrative-BasedMedicine)!
素敵なお話ですね。

でもねぇ
日本全国、どこの診察室でも
このような物語が始まるわけではない現実もありますよね。

そして、術前ホルモン療法のお話。
ホルモンレセプター陽性の人で
ホルモン療法が効かない人がいるらしいのです。
それを調べるために、手術前に3~6ヶ月
ホルモン療法を行うというものです。
この術前ホルモン療法については
現ガイドラインでは強く勧められているわけではなく
現在は、臨床試験段階です。
しかし、5年も飲む薬の効果のあるなしは
無視できない問題であるとも言える
というお話でした。

ところで、乳がん患者は他のがん種に比べ
不安が高い傾向にあるとか……。
そして、その不安への早期介入(緩和治療やカウンセリング)は
生命予後にも影響するのだそうです。

なるほど、このあたりに
乳がんの患者会などが多い理由がありそうですね。
そして、乳がん患者会が姦しいのも
不安があるからこそ
その不安を吐き出すためにいっぱい喋り
吐き出した不安の分だけ
元気になるのかもしれませんね。

「もっと知ってほしい乳がんのこと2010」は
まもなく、キャンサーネットジャパンのホームページ
上で
公開されます。
お楽しみに!

2010年11月11日木曜日

キャンサーネットジャパン・ビデオライブラリより「もっと知ってほしい大切にしたい「会社・病院etc...」のこと

キャンサーネットジャパン
ビデオライブラリ
もっと知ってほしい大切にしたい「会社・病院etc...」のこと


7月24日に開催された
もっと知ってほしい大切にしたい「会社・病院etc」のことでは
がん患者が、その経験をいかに社会に還元するか
還元できるような社会とは
という観点から、がんを考えています。

今はまだ、がん患者だからということで
会社を辞めたり
また、会社には患者であることを隠していたり
という事がよくあるようです。

でも、がん経験者を雇うことで
新たな雇用形態が生まれたり
その新たな雇用形態は
がん患者のみならず
他の病気の患者や高齢者にとっても
働きやすい環境かもしれない。
そこに、少子高齢化で
今までのような右肩上がりの発展も望めない日本社会にとっては
新たな展望が生まれるかもしれません。

そのためにも、がんと告知されても
あきらめずに、まずは自分の病を正しく知り
治療を受けながらも、社会参加を続けていく
という意識が、患者には必要なのかもしれません。

仕事に限らず
がん患者となっても
自分なりに社会と関わり続けることは
療養生活上でも、きっとプラスになると思います。

では、以下にこのビデオ関連の情報をお知らせします。

12月5日には「ラン・フォー・ホープin東京 2010」が開催されます。
このイベントは、がん撲滅をスローガンとしたチャリティジョギング/ウォーキング大会です。
フォーシーズンズホテル椿山荘 東京が
1992年のホテルオープン以来続けている取り組みだそうです。
詳しくは、こちらをご覧下さい。

そして、この椿山荘で、12月25日に
キャンサーネットジャパンによる
キャンサーサバイバーズイブニング
「心と身体の栄養のお話」とX'mas Party
が開催されます。
一般一万円の参加費が
がん患者・体験者は、7千円だとか。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
セミナー参加者は
ホテルの宿泊料金が3割引になるサービスもあるようです。

それから、もう一つ。
キャンサー・ソリューションズ㈱による
がん経験者のための就労支援プロジェクトというものがあります。
これは、株式会社日本医療事務センターに
がん患者として登録し
がん患者を積極的に受け入れてくれる企業への
就職支援を行おうというものです。
まだまだ始まったばかりの試みで
すぐに就労というわけにはいかないかもしれません。
でも、登録者数が増えれば
その事が一つの力となり
もしかしたら、企業を動かす力になるかもしれませんね。
詳しくは、こちらをご覧下さい。
キャンサーソリューションズ㈱

2010年11月5日金曜日

日々進化するがん治療

京都で開かれた日本癌治療学会の「日本癌治日報」より
乳がん関連の記事をご紹介します。

10月29日シンポジウム14『トリプルネガティブ乳がんの治療戦略が進化しはじめた』

昨年、乳がん体験者コーディネーター講座を受講時に
「今、治療法に苦慮するのが、トリプルネガティブ乳がん」
という話を聞きました。

一年後の癌治療学会の速報でのこの見出し。
日々進化しているがん治療を目の当たりにしたように思いました。

そして、もう一つ驚きだった記事が
10月30日『消失した腫瘍を正確かつ安全に切除するには?』
という記事です。

術前化学療法で小さくした腫瘍を切除するという術前化学療法ですが
化学療法により腫瘍の存在が確認できない場合もあるとか。
そんな時、どこまで切除するのかの決定が難しいそうです。
そこで、化学療法施行前のCTによる3次元構築画像を
患者の体表に直接投影して、腫瘍があった範囲を把握しながら
手術を行う方法があるそうです。

すごいですねぇ~。

化学と科学で、患者を救う……
ってところでしょうか。